漆器の木地作り
木地(きじ)とは漆器における漆を塗る前の白木のままの木材、指し物、器をいいます。
これらを作り人は古くから木地師と言われる専門の職人集団を形成しています。
|木地作りとは漆器の本体作り
漆器は土台となる木工品に下加工を加え、漆を塗って装飾を施して作り上げてゆきます。
最近売られている漆器はプラスチックを土台にしたものが多くなっていますが、
本来は木器を土台にしたものが漆器と言われるものです。
木製の漆器はその質感や感触、温もり、断熱性では合成樹脂に比べて格段の差があり
本来の漆器の良さの魅力がそこにあります。
日本人は有史以来、その生活を自然の樹木に大きささえられてきました。
日本人の心は木によって形成されてきたいってもいいかもしれません。
|木地作りから漆工は始まる
漆器は古代に木の耐久性の強化のために塗られたものと考えられます。
それがやがてその美しさから美術工芸の価値に重きが置かれ、
塗る職人さんが漆器作りの主流になってしまいましたが、
土台の木地を創作している木地師といわれる人たちの役割も極めて大きなものがあります。
森の民である大和民族の知恵と魂が木工にあります。
実はこの木地作りの段階でも膨大な年月と手間がかけられていることを私たちは
あまりしりません。
原料の木材を取るために何十年何百年とかけて木を育て上げて、伐採し、選別して、
それからまた何年何十年も寝せて乾燥させます。
木地師は木材の最高の見計らってそれに見合った形に作り上げてゆきます。
そして漆工の工程に木地を受け渡してゆきます。
元が良くなくてはどんな漆塗りの技術があっても満足のゆく製品に作り上げることは
出来ません。
木地師の土台作りが大きく左右してゆきます。
漆器作りのスタートは木地作りにあるのです。
もっと言うならば木を山中に植林した時から始まるのかもしれません。
|漆器に使われる木
祖先たちは日本の各地に自生してきた天然の樹木を
その特性に合わせて漆器作りに利用してきました。
樹木は大きく分けて、針葉樹と広葉樹に分けられます。
広葉樹は一般的には硬材とされて変化に飛んだ木目が得られるが
木肌は粗い性質があります。
針葉樹は柔らかく割れやすい性質がありますが、きめ細かな滑らかな木肌になっています。
日本人は古くから木肌が細やかな杉やヒノキ、松などの針葉樹を
漆器の材料として好んできました。
そのほかケヤキ、トチ、ブナ、カツラなどが広く使われています。
|木取り
原木から板を切り出すことを木取りといいますが、
その切り出し方によって木目が大きく違ってきます。
大きくは柾目(まさめ)と板目(いため)2通りあります。
|柾目
原木の中心からその半分を外に向けて切り出してゆきます。
年輪が平行に密着して並びます。
木の半分しか利用できないために幅広い木材は大木でしかとることができず
歩留まりも悪く高価になりますが、
木目が密着しているので収縮やそりの歪みが少なくなります。
|板目
板目は木の中心をはずして木の幅いっぱいに板取りしてゆきます。
木目は変化に飛んだ大きな波のようになり面白みはありますが、
歪みが生じやすくなります。
歩留まりは柾目よりよくより安価になります。
|木地の加工法技術
漆器の木地は様々な技法でそれぞれの地域の技術によって作られています。
|指物(さしもの)
よく時代劇などで出てくる指物師の木工技術です。
釘などを使わず木材を組み合わせて家具や箱、机、茶道具、箸箱、重箱
などを作り上げます。
|挽物(ひきもの)
木材をろくろや旋盤で木材を刃物で削り、椀や盆などの円形の木地を作ってゆきます。
木材を輪切りにする竪挽きと縦の板目方向に使う横挽きの二通りの木取りがあります。
地域や用途によって分かれています。
お椀は竪挽きに向いていて、お盆や皿は横挽きで作ります。
|曲物(まげもの)
ヒノキや杉などの柾目の薄い板を熱して柔らかくして曲線の形状を作ります。
底や蓋をつけて容器を作る技術です。
丸盆や弁当箱を作ります。
秋田の曲げわっぱがその代表です。
|刳物(くりもの)
厚い板をのみ等でくりぬいて作る技法です。
もっとも原始的な方法で杓子や匙などの小物から、鉢や臼などの大きなものを作ります。
|結物(ゆいもの)
桶や樽をつくる技術です。
木材を短冊状にして円形に並べてタガ(箍)で締めます。
耐水性や密封性、耐久性にすぐれお酒やしょうゆ味噌など加工容器や
運搬容器に使われてきました。
|籃胎(らんたい)
竹を裂いて薄く削って編んだ素地を作りそのうえに漆塗りします。
盆や文庫の木地になります。
籃は竹で編んだ籠のことを意味しています。