会津塗とは何か?

会津塗

会津塗とは

会津塗とは福島県会津地区の伝統工芸品である会津漆器を全般的に指しています。

敢えて会津漆器ではなく、会津塗と呼ばれるのはその卓越した高度で多彩な塗りの技術に依るからなのです。

輪島塗も同じく塗りの技を誇って双壁をなしています

輪島塗の発展は、その昔、会津の塗師を招いたことから始まりました。

会津塗と輪島塗の違いは、輪島塗は芸術性を重視し、美術品としての価値を追求していますが、

会津塗は人の日常生活の中の道具としての実用性の追求にその特徴があります。

 

 

会津塗のさらなる特徴

会津塗の特徴は螺鈿、漆絵、乾漆、蒔絵、花塗など多岐にわたる技法を駆使した日用品漆器といえます。輪島塗は美術品としての価値を追求してきましたが、会津塗は日々の生活の中に溶け込んだ日用品の道を歩みました。盆や菓子器、椀、文箱、膳などの日用品の製品群は多様で、高品質です。

また、漆の生産から、木地作り、装飾の全行程が会津に中で完結しているのも一つの特徴です。木地、塗、加飾の工程をそれぞれ専門の職人が分業で作っています。他の漆器産地では他地域からの調達や手伝いに頼っていることも多いのですが、会津は会津の中で会津塗の製品を作り上げることが可能なのです。現在の主な産地は会津若松市や喜多方市、南会津町、西会津町、北塩原村、会津美里町となっています。

 

漆器製作の工程のオサライ

ここで、会津塗の理解を深めるために基礎知識として漆器の一般的な工程を再認識してみましょう。一つの漆器が出来るまでには多くの職人さんがかかわり、多くの手数がかけられてゆき

おおよその工程は以下のようになります。

 

(漆塗料)

  • 漆木の栽培
  • 漆樹液の採取
  • 漆液の精製

 

(木地材料の用意)

  • 原材料の樹木の植林
  • 原木の伐採
  • 木の乾燥選別

 

(木地原型の製作)

  • 木からお椀などを削りだす挽物(ひきもの)
  • 板を組み合わせする指物
  • 薄い板を曲げる曲げ物
  • ノミで削る刳物(くりもの)

これらの技術で木地の原体をつくる。

 

(木地作り、下地作り)

  • 原型の補強と器の形を整える
  • 生漆ぬって木地固めする
  • 布着せによる補強
  • 地の粉と漆(もしく柿渋と炭粉)を塗って、乾燥させて磨く(下地づけ)
  • 下地づけを3回ほど繰り返す

 

(漆塗りの3工程)

  • 下塗
  • 中塗
  • 上塗

(加飾)

  • 蒔絵
  • 箔絵
  • 漆絵
  • 沈金
  • 螺鈿

などの装飾を施します。

会津塗は、これらの一連の漆の生産、木地作り、漆塗り、加飾の作業が会津の中で一貫して行われることにあります。

これは他の漆器産地にはない特徴で、会津塗は、会津の中で完結できるのです。

 

漆の塗工が会津に根付いた理由

現在、会津漆器工芸は凡そ50億の売り上げがあり、全国3位の産地になっています。

会津塗りの本格的な発展は400年前の蒲生氏郷(がもううじさと)の秀吉の命による

転地が起点になっています。

氏郷は漆工芸の木地師、塗師などの職人たちを岐阜の日野塗りの産地から招き、

優遇したことから始まります。

会津の風土や人の気質も漆工芸の定着には大いに幸いしました。

会津は内陸の盆地であり周囲は山々に囲われています。

冬は雪に囲まれた厳しい環境にあります。

高湿な気候は漆塗りには最適です。

漆の木の生育にも最適でした。

何よりも会津の人々のまじめな気質と我慢強さと努力が

漆工の技を磨き上げて伝承させてゆきます。

 

周囲の山々は漆の栽培には最適で木地となる樹木も豊富でした。

会津塗では地元のブナ、カツラ、トチやケヤキが丸物木地に使われ、

重箱などはホウの木が使われ、その他センノキやシナノキも使われます。

会津盆地の周辺の山地ではロクロを廻して木器を製作する

木地師の集落が多く存在します。

その起源は蒲生氏郷にさかのぼるとされています。

 

厳しい自然環境では農業生産だけでは不十分であったことも

漆工芸を振興せざるを得なかった事情があります。

歴代の藩主は漆及び漆器の生産を奨励することで藩の財政の助けとしてきました。

漆の木はその実から蝋がとれ、江戸などに運ばれていました。

漆の木は大きな恩恵を人々にもたらしたのです。

 

 

会津塗りの特徴は多彩な加飾技術

会津塗りの特徴はしっかりした木地の土台作りに加えて

会津漆器とは言わず「塗」といわれるように、その塗りと加飾の多彩性にあります。

会津には様々な塗りの技法が開発され育成されてきました。

会津の蒔絵の技法は江戸時代に輪島に伝わり輪島の華麗な漆器の元になっています。

会津塗りの特徴は下記のようになります。

 

(下地作り)

会津塗りは柿渋を使った渋下作りで主に行われます。

(上塗り)

会津塗りは上塗りの特徴は主に花塗りといわれる手法が使われます。

花塗は塗立てともいわれます。

また変わり塗りとして金虫喰い塗り(きんむしくいぬり)も特徴的です。

会津の上塗りをご参照ください)

 

(加飾、装飾)

多くの多彩で華麗な飾りの技法を駆使するのが会津塗りの特徴です。

  • 朱磨き(しゅみがき)
  • 網絵(あみえ)
  • 消粉蒔絵(けしふんまきえ)
  • 平極蒔絵(ひらごくまきえ)
  • 丸粉蒔絵(まるふんまきえ)
  • 鉄錆蒔絵(てつさびまきえ)
  • 朱磨き
  • 消金地(けしきんじ)
  • 会津絵
  • 錦絵
  • 沈金

(参照:会津の漆絵 会津の蒔絵

会津塗りは実用面で人々に愛されてきました。

実用的で華麗な漆器が会津塗りの特徴です。

また仏壇などの仏具漆器の生産も盛んです。

近年では会津塗の技はウレタン樹脂やカシュー樹脂などの合成塗料を利用した

ウレタン塗装やカシュー塗装などのより実用的な商品へと展開されています。

 


 

 

  1. 会津塗とは
  2. 会津塗の上塗り(仕上げ塗)
  3. 会津漆絵
  4. 会津の蒔絵
  5. 会津塗の歴史
  6. 会津の木地作り